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2020.12.01 ◆米国健康保険基礎知識

 

<米国健康保険基礎知識>


▼米国の医療保険制度:

 

米国には、日本のような国民皆保険制度がありません。基本的には、個人として任意に民間医療保険に加入するか、または職場を通して団体医療保険に加入するようになっています。

 

しかし、2014年1月1日から開始されたオバマケア(Affordable Care Act:患者保護及び医療費適正化法により、民間の医療保険への加入が義務付けられ、怠った場合はペナルティ(罰金)が科せられるようになりました。しかしながら、連邦または州政府が健康保険制度を用意しているのではなく、国民が民間保険に任意に加入するというスタンスは今も変わっていません。

 

J-1 Exchange Visitorの中でも、ポスドクで大学や病院に勤務される方は勤務先から団体医療保険が用意されており、保険料の一部を勤務先が補填してくれるので、持ち出しは少なくて済みます。

 

これに対し、Visiting Scholarで留学される場合は、留学先の大学・研究機関・病院からの指示に基づき、自費でJビザ保険条件を満たす医療保険に加入する必要がありますので、特に同行家族がいる場合は結構な保険料になります。

 


▼オバマケアとJ-1 Exchange Visitor:

 

国務省のJ-1 Exchange Visitor向け保険条件の中に、スポンサー(大学や研究機関)に対し以下のコメントが記されています。

 

Sponsors must inform all exchange visitors that they, and any accompanying spouse and dependent(s), also may be subject to the requirements of the Affordable Care Act.

 

(参考訳)

スポンサーは、全てのJ-1 Exchange Visitorおよび同行の配偶者・家族に対して、J-1 Exchange Visitorおよび同行の配偶者・家族がオバマケアの対象になる可能性のあることを通知しなければならない。

 

オバマケアの対象者は、米国民(永住権を持っている外国人、労働ビザがある外国人も含む)です。一般的にJ-1 Exchange Visitorは、渡米後2年間は非居住者とみなされ、オバマケアの適用対象外になるとされています。

 


▼PPOとHMO:

 

米国健康保険で最もメジャーなタイプは、PPO(Preferred Provider Organization)です。PPOタイプの保険は、保険加入者に提携ネットワーク内の医療機関(提携医療機関)で受診した場合と、提携ネットワーク外の医療機関(非提携医療機関)で受診した場合で、給付条件に差をつけています。非提携医療機関を利用した場合には、提携医療機関を利用した場合に比べて格段に自己負担が多くなります。

 

PPOタイプと並んでメジャーなのがHMO(Health Maintenance Organization)イプです。HMOタイプの健康保険では、緊急医療時を除き、ネットワークに加盟している医療機関しか使えません。またHMOタイプでは、全保険加入者に「かかりつけ医(Primary Care Physician:PCP)」での初診が義務付けられており、専門医や総合病院で受診する場合には、かかりつけ医の紹介状が必要となります。


HMOタイプの健康保険の保険料は、PPOに比べて医療機関選択の自由度が低い分、総じて割安です。

 

なお、PPOやHMOの他に、EPO(Exclusive Provider Organization)POS(Point of Service)という、PPOとHMOの中間に位置づけられるハイブリットタイプもあります。ちなみに、EPOはHMOの「かかりつけ医での初診」を不要としたタイプで、POSはPPOに「かかりつけ医での初診」を付け加えたタイプです。

 

有給ポジションのJ-1 Exchange Visitorは、留学先の大学・研究機関より複数のPPOタイプまたはHMOタイプの職員用健康保険が用意されおり、補償内容と保険料を比較して選択加入するようになっています。

 

なお、米国大学の学生用健康保険のほとんどは、PPOタイプです。 

 


▼主な自己負担条件:

 

米国健康保険の自己負担の条件には、主として以下の3種類があります。

 

Deductible(免責金額):医療費がこの金額に達するまで保険が使えません。

 

Co-insurance(自己負担割合):20%や30%等、医療費の一定割合が自己負担となります。

 

Copayment(自己負担金):医療サービスを受ける度に医療機関に支払う負担金(定額)です。

 

上記の中で日本の健康保険にあるのは「②自己負担割合」のみです。他は米国独自の条件です。

 

これ以外の自己負担としては、保険会社が任意に決めるUsual, Reasonable and Customary Charges(URC:保険給付対象額)という基準による医療費との差額があります。日本のように政府が診療報酬を統制しておりませんので、同じ医療サービスでも医療機関により請求額が異なってきます。そこで保険会社は予め保険給付基準を用意しており、実際の医療費のうち、保険給付基準額のみ保険金の支払い対象にします。双方の差額が発生すれば、上記の①~③の自己負担条件とは別枠で自己負担になります。 

 

 

▼J-1 Exchange Visitor向け民間医療保険: 

 

米国の大学がJ-1 Exchange Visitor向けに案内しているJビザ用の民間医療保険は数が多く、その中から自分に最適なプランを選択するのはかなり大変です。 

 

Jビザ用の民間医療保険は、PPOタイプTravel Medical Insuranceタイプの2種類に分類されます。(HMOタイプに該当するものはありません。) 

 

PPOタイプは保険料が割高ですが、提携医療機関を利用した場合の保険給付条件が、非提携医療機関利用時と区別される形で明示されていますので、補償内容に安心感があります。 

 

これに対してTravel Medical Insuranceタイプは、保険料が割安である反面、どの医療機関を利用しても医療費が保険会社の給付基準で査定され、医療費と保険給付基準額との差額は自己負担になりますので、留意すべきでしょう。

 

 

▼米国での高額事故例: ※( )内は該当年度と支払保険金額

 

・ハイキング中に滑落し救急車で搬送。腰椎骨折と診断され10日間入院。(2017年度、2,890万円

 

・コンビニで買い物中に意識を失い救急車で搬送。心不全と診断され25日間入院。医師・看護師が付き添い医療搬送。(2015年度、2,347万円

 

・腹痛と下痢のため受診。腹部痛と診断される。(2018年度、1,081万円

 

・階段で足を滑らせ転倒し受診。肘の骨折と診断され3日間入院・手術。(2018年度、972万円

 

・留学中に不正出血で受診。卵巣嚢腫と診断され手術。(2015年度、809万円

 

・発熱・咳の症状で受診。肺炎と診断され8日間入院。(2016年度、683万円

 

・航空機着陸後に息苦しさと動悸を訴え救急車で搬送。肺塞栓と診断され6日間入院。(2017年度、667万円

 

・ホームステイ先で腹痛を訴え受診。急性虫垂炎と診断され2日間入院・手術。(2017年度、515万円

 

・食後に嘔吐、下痢の症状を訴え救急車で搬送。急性大腸炎と診断され3日間入院。(2017年度、506万円

 

 

出典:ジェイアイ傷害火災保険「海外での事故例(2015年~2018年)」

  

photo: ダミー